顧客理解とは?深め方と10の手法、役立つフレームワークまで解説

顧客理解とは?

顧客理解とは、顧客が「何に困っていて」「どう選び」「何をためらっているのか」を把握することです。

多くの企業は、集客や採用がうまくいかないとき、広告やホームページの改善から手をつけます。しかし、伝える相手のことが分かっていなければ、どれだけ施策を足しても当たりません。

そして厄介なのは、顧客理解が浅い状態でも、施策は普通に走ってしまうことです。止まらないまま、成果だけが出ません。

この記事では、顧客理解の意味と顧客分析との違い、深めるための10の手法とフレームワーク、そして実際に解釈がずれていた事例までを解説します。

目次

顧客理解とは?

顧客理解とは、顧客が抱える課題・検討行動・不安を把握し、自社の判断に使える状態にすることです。

「顧客のことを知る」と言うと、年齢や地域、企業規模といった属性情報を思い浮かべる方が多いと思います。しかし実務で必要になるのは、「なぜその人は困っているのか」「何と比べて、何が決め手になったのか」という中身のほうです。

例えば、同じ「製造業・従業員50名」の会社でも、人が足りなくて困っている会社と、売上が頭打ちで困っている会社では、響く言葉がまったく違います。属性は同じでも、課題が違えば別の顧客だということです。

顧客理解と顧客分析の違い

顧客分析は、データを集めて傾向を出す作業です。顧客理解は、そこから「だから何をするか」を決められる状態を指します。

分析はしているのに施策が変わらない、というケースは少なくありません。その場合、データが足りないのではなく、データが判断につながっていないことが多いです。

顧客インサイトとの関係

顧客インサイトは、顧客自身が言語化できていない潜在的な動機を指します。

「安いから買った」と答えた人が、実際には「選ぶのに時間をかけたくなかった」というケースがあります。インサイトは聞けば出てくるものではなく、発言と行動のズレから読み取るものです。顧客理解は、この読み取りまで含んだ言葉だと考えています。

「知っている」と「理解している」は違う

長く事業をやっていると、「顧客のことは分かっている」という感覚が生まれます。ただ、その多くは自社視点での解釈です。

「たぶんこう思っているはず」と、「実際にこう言っていた」は別物です。顧客理解の出発点は、自分の解釈をいったん脇に置くことにあります。

顧客理解が重要な3つの理由

顧客理解は、それ自体が目的ではありません。次の3つに直結するから重要だと考えています。

1. 訴求が変わり、同じ商品でも反応が変わる

広告のコピー、ホームページの見出し、営業資料の構成。これらはすべて、顧客が何に困っているかが分かっていなければ書けません。

例えばホームページ制作会社が「実績1,000社」と書くのと、「他社に頼んだが成果が出ず、作り直したい方へ」と書くのでは、届く相手が変わります。後者は、顧客の状況を知っていなければ書けない言葉です。施策を増やす前に、この一行の精度を上げるほうが効くケースは多くあります。

2. 商品・サービスの改善点が具体になる

顧客理解が進むと、改善すべき点が「なんとなく使いづらい」から「この場面で迷っている」に変わります。

製品開発でも同じです。機能を足すべきなのか、説明を変えるべきなのかは、購買に至る過程を見ないと判断できません。

3. 価格ではなく価値で選ばれるようになる

顧客の課題が見えていないと、伝えられるのは商品説明だけになります。商品説明だけが並ぶと、顧客は価格でしか比較できません。

価格競争に巻き込まれている状態は、多くの場合、価値がないのではなく、価値が誰のためのものか伝わっていない状態です。この点は価値提供とは?でも詳しく解説しています。

顧客理解で見るべき3つの視点

実務では、次の3つが分かれば十分に機能します。

  • 課題:表面的な要望の奥にある「本当に解決したいこと」は何か
  • 検討行動:どこで情報を探し、何と比較し、何が決め手になるのか
  • 不安:問い合わせや購入をためらわせている心理的なハードルは何か

例えば「ホームページを作りたい」という要望の奥には、「問い合わせを増やしたい」があり、さらにその奥に「紹介頼みの状態から抜けたい」があります。ここまで降りられると、書くべき言葉が変わります。

この3つが見えると、ホームページの文言、広告の訴求、営業トークまで一貫して設計できるようになります。逆に、ここが埋まっていない状態で施策を走らせても、当たるかどうかは運になります。

顧客理解の事例:解釈がずれていた2つのケース

ここまでの話は、抽象的に聞こえるかもしれません。実際に支援した中で、こちら側の解釈がずれていた事例を2つ挙げます。守秘のため、社名は伏せます。

事例1:属性で切ったために、訴求が広がりすぎた(金融・資産形成サービス)

当初は「主婦層」というターゲット設定で進めていました。属性で切ったため、扱うテーマが際限なく広がります。NISA、住宅ローン、資産形成。どれも主婦層に関係があると言えてしまうからです。

結果としてLPは幅広い内容になり、広告の反応はほとんど出ませんでした。

見直したのは、ターゲットではなく切り口です。「主婦層」ではなく「家計・子育て・教育にかかるお金」と、資金の使い道で絞り直しました。読み手は同じでも、自分ごとになる情報だけが残ります。ここから広告の効果は大きく変わりました。

属性で切ると、課題が絞れません。「誰か」ではなく「何に困っているか」で定義する、というのはこういうことです。

事例2:用途を思い込んでいた(ペット向け食品ブランド)

米糀を使ったペット向け商品を、「おやつ」として販売していました。

購入者に実際の与え方をヒアリングしたところ、想定と違いました。おやつとして単体で与えるのではなく、普段のフードにかけて使っている人が多かったのです。つまりこの商品は、おやつではなくトッピングフードでした。

位置づけが変わると、伝えられることが増えます。食いつきが良くなるという体験価値と、米糀を使っていることによる健康面の価値を、両方訴求できるようになりました。

ここで変わったのは広告の文言ではなく、商品そのものの立ち位置です。顧客理解が効くのは施策の改善だけではない、という事例だと思っています。

2つに共通していたこと

間違っていたのは商品ではなく、こちら側の解釈でした。

そして2つとも、ズレに気づいたきっかけは「実際に買った人が何と言い、どう使っているか」を聞いたことです。データを増やしたからでも、フレームワークを埋めたからでもありません。

顧客理解の2つのアプローチ

顧客理解の手法は数多くありますが、大きく2つに分かれます。行動を対象とした分析と、意識・感情を対象とした分析です。

行動を対象とした分析(定量)

購買履歴、アクセス解析、広告の反応など、数値として残るデータを扱います。「どこで」「どのくらい」起きているかが分かります。母数が確保できるため、全体傾向を把握するのに向いています。数字の見方は定量分析で解説しています。

意識・感情を対象とした分析(定性)

インタビューやアンケートの自由回答など、言葉として出てくる情報を扱います。「なぜ」そうしたのかが分かります。母数は少なくなりますが、行動の背景にある動機や不安はここからしか出てきません。理由の掘り下げ方は定性分析で解説しています。

2つを組み合わせないと片側しか見えない

数字は「どこで起きているか」を教えてくれますが、「なぜ起きているか」は教えてくれません。逆に、インタビューだけでは、その意見が全体の傾向なのか一人の感想なのかが判断できません。

実務では、行動データで当たりをつけ、インタビューで理由を掘る。この順番が効率的です。先ほどの事例2も、購入は起きているのに再購入の理由が読めない、という数字側の違和感が先にありました。

顧客理解の進め方(4ステップ)

STEP1 既存のお客様を棚卸しする

ゼロから理想像を描くより、今のお客様から始めるほうが確実です。「利益をもたらしてくれる」「付き合いがスムーズ」「成果が出ている」お客様を書き出し、共通点を探します。ここで見るのは業種や規模ではなく、依頼してきたときの状況です。

STEP2 選ばれた理由を聞く

そのお客様に「なぜ他社ではなくうちを選んだのか」「依頼前は何に困っていたか」を直接聞きます。ここで出てくる生の言葉が、最も重要な素材です。自社で考えた訴求文より、お客様が実際に使った言葉のほうが強いことが多くあります。

STEP3 課題・状況で言語化する

集めた情報をもとに、「◯◯という状況で、◯◯に困っていて、◯◯を求めている人」という形にまとめます。属性(年齢・地域・規模)は補足情報として添える程度で十分です。この言語化ができると、そのままホームページの見出しや広告のコピーに転用できます。

STEP4 数字と行動で検証する

まとめた内容をもとにメッセージを発信し、反応で検証します。見るのは問い合わせの数だけではありません。想定した課題を持った人から来ているかというが、顧客理解の答え合わせになります。ズレていた場合はSTEP2に戻ります。

顧客理解を深める10の手法

手法は数多くありますが、中小企業で現実的に回るものを10挙げます。並べ方は着手コストが低い順ですが、どれが効くかは事業によって変わります。

1. 商談・問い合わせ内容の棚卸し

すでに社内にある情報です。商談メモや問い合わせフォームの記入内容を並べると、繰り返し出てくる言葉が見つかります。コストがゼロなので、最初に手をつける手法として向いています。

2. 営業・カスタマーサポート部門へのヒアリング

顧客と最も接している人が、最も情報を持っています。ただし、その情報は個人の頭の中に留まりがちです。「最近よく聞かれることは何ですか」と聞くだけでも、施策に使える材料が出てきます。聞く項目を揃えて残す仕組みについては営業の仕組み化とは?で解説しています。

3. 顧客インタビュー

最も情報量が多い方法です。既存顧客3〜5人に30分ずつ話を聞くだけでも、想定していなかった言葉が出てきます。聞くべきは満足度ではなく、「依頼前に何を不安に思っていたか」です。

聞く内容は相手や状況によって変わりますが、この5つは軸として持っています。

質問引き出したいこと
1今のお客様には、どんな方が多いですか顧客の輪郭
2そのお客様は、依頼前に何に困っていましたか課題
3実際に購入した方は、なんと言っていますか生の言葉
4どんな使い方・行動をとっていますか想定とのズレ
5なぜ他社ではなく、御社を選んだのですか決め手

特に4番目は、こちらの想定とのズレが出やすい質問です。先に挙げた事例2のズレが見つかったのも、ここからでした。

4. アンケート調査

インタビューの時間が取れない場合の代替手段です。設問は5問程度に絞り、自由記述を1問入れると、拾える情報が一気に増えます。回答率を上げるには、対面の打ち合わせを設定するより、普段使っているチャットツールで送るほうが確実です。

5. 口コミ・レビューの確認

自社と競合の両方を見ます。特に競合のレビューは、顧客が何に不満を持っているかが書かれた一次情報です。BtoBであれば比較サイトのレビュー、BtoCであればECサイトのレビューが該当します。

6. アクセス解析

どのページが読まれ、どこで離脱しているかを見ます。「何を知りたがっているか」が行動として出るため、インタビューの仮説づくりに使えます。特に、想定していなかったページが読まれている場合は、そこに需要があります。

7. 購買データの分析

購入頻度、購入金額、併売されている商品を見ます。「何と一緒に買われているか」は、その商品がどんな場面で使われているかを示します。事例2のトッピングフードのように、用途の思い込みはここに現れることがあります。

8. ソーシャルリスニング

SNS上で自社名や商品名、関連キーワードがどう言及されているかを追います。こちらから聞いていない状態の発言なので、忖度のない反応が見られます。BtoCで効果が出やすい手法です。

9. ユーザーテスト

実際に商品やサービスを使ってもらい、その様子を観察します。聞くのではなく見るのが特徴です。「使いにくい」と言わなかった人が、実際には同じ画面で3回迷っている、といったことが分かります。

10. 行動観察(エスノグラフィ)

顧客が実際に商品を使っている現場に行き、観察します。手間はかかりますが、本人も意識していない行動が見えます。店舗やBtoBの現場業務など、使用場面が固定されている事業と相性がいい手法です。

顧客理解に役立つフレームワーク

集めた情報は、そのままでは判断に使えません。整理するための型を4つ挙げます。

カスタマージャーニーマップ

認知から検討、購入、その後までの流れを一枚に並べる方法です。各段階で顧客が何を考え、何に迷っているかを書き込みます。顧客との接点が多い事業ほど効果があります。一方で接点が少ない事業では、作り込みすぎると手段が目的化しやすいので、簡易版で十分です。

STP分析

市場を分け(Segmentation)、狙う層を選び(Targeting)、立ち位置を決める(Positioning)という3段階の型です。先ほどの事例1で起きていたのは、このSegmentationを属性で行ったことによる失敗でした。分ける軸を「誰か」ではなく「どんな課題を持っているか」にすると、機能しやすくなります。

5W1H

誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように。シンプルですが、インタビューの整理には十分使えます。特に「なぜ」と「どのように」の2つは、埋まらないことが多い部分です。埋まらない箇所が、そのまま次に聞くべきことになります。

RFM分析

最終購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)で顧客を分類する方法です。購買データがある事業で使えます。「よく買う人」と「たまに高額を買う人」では動機が違うため、分けて理解する必要があります。

フレームワークは埋めることが目的ではない

どの型も、埋めれば顧客理解が進むわけではありません。埋まらない箇所を見つけて、そこを聞きに行くための道具です。きれいに埋まったマップができた時点で満足してしまうのが、一番ありがちな失敗だと思っています。

顧客理解とターゲット顧客の関係

ターゲット顧客とは、自社の価値が最も届くお客様像のことです。顧客理解とターゲット設定は、順番が逆になりがちです。

先にターゲットを決めてから顧客を調べると、決めた内容を裏づける情報ばかりを集めてしまいます。実際には顧客理解が先で、その結果としてターゲットが決まります。

「◯◯という状況で困っている人」という形が見えたとき、それがそのままターゲット定義になります。新規顧客の獲得ステップについては新規顧客を獲得するには?で解説しています。

顧客理解が進まない3つの原因

  • 聞く機会がない:お客様と話す場が、契約時と納品時しかない
  • 聞いても記録が残らない:担当者の頭の中にはあるが、共有されていない
  • 聞いた内容が施策に反映されない:情報はあるが、ホームページや広告に反映する担当が別で、つながっていない

3つ目が一番多いと感じています。顧客理解が足りないのではなく、理解と実行の間が切れているケースです。

聞き取った言葉が、そのまま広告のコピーやホームページの見出しに反映される経路をつくっておくことが重要です。

よくある質問

顧客理解と顧客分析の違いは何ですか?

顧客分析はデータを集めて傾向を出す作業、顧客理解はそこから判断できる状態を指します。分析をしても施策が変わらない場合、データではなく解釈の段階に課題があることが多いです。

何人にインタビューすればいいですか?

まずは3〜5人で十分です。同じ言葉が2人以上から出てきた時点で、それは個人の意見ではなく傾向として扱えます。

定量と定性は、どちらから始めるべきですか?

行動データで当たりをつけてから、インタビューで理由を掘る順番が効率的です。ただし、すでに違和感がある場合は、いきなり聞きに行っても構いません。

新規事業で既存顧客がいない場合はどうすればいいですか?

近い課題を持つ人に話を聞く、競合の口コミやレビューを読むといった方法があります。ただし精度は落ちるため、最初の顧客が数件できた時点で必ず聞き直すことをおすすめします。

フレームワークはどれを使えばいいですか?

接点が多い事業ならカスタマージャーニーマップ、購買データがあるならRFM分析から始めるのが実務的です。ただし、埋めること自体が目的にならないよう注意してください。

プロリバの考え方

プロリバでは、集客や採用のご相談でも、必ず顧客理解から確認します。広告もホームページも採用サイトも、伝えるための手段です。伝える中身が固まっていない状態で手段を増やしても、成果は安定しません。

また、顧客理解は一度やって終わるものではないと考えています。市場も競合も変わるため、選ばれる理由も変わります。半年に一度でも、直近のお客様に「なぜうちを選んだのか」を聞く場を持てるかどうかで、施策の精度は変わってきます。

ご相談をご検討の方へ

もし現在、

  • 誰に向けて発信すべきか、社内で意見がバラバラ
  • 問い合わせは来るが、合わないお客様ばかり
  • お客様の声を聞く機会がなく、感覚で判断している

という状況であれば、既存のお客様の棚卸しから一緒に整理することをおすすめします。

プロリバでは、顧客理解から訴求の言語化、ホームページ・広告への展開まで一貫して支援しています。

まずはお気軽にご相談ください。

中塚 祐太郎

この記事の執筆・監修:中塚 祐太郎(合同会社Progress Liberty 代表)

東京理科大学卒。数学講師・教室運営を経て、株式会社葵(Z会グループ)執行役員COO、合同会社DMM.com COO室で新規事業開発・M&Aを担当。2021年に合同会社Progress Libertyを設立し、中小企業の事業設計・集客・採用を「誰に・何を・どう伝えるか」の設計から一貫支援。大手メディアのEC事業立ち上げ支援、スタートアップのイグジット支援などの実績。会社概要

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