営業の仕組み化とは?進め方と、型にできる工程・できない工程の見分け方を解説

営業の仕組み化とは?

営業の仕組み化とは、個人の力量に依存している成果を、組織として再現できる状態にすることです。

多くの解説では、営業プロセスを可視化し、標準化し、SFAやCRMを導入する、という手順で語られます。ただ、実際にやってみると、この順番では動かないことがあります。

そもそも、すべての工程が型にできるわけではありません。

この記事では、営業の仕組み化の進め方と、型にできる工程とできない工程をどう見分けるかを解説します。支援の現場で、うまくいかなかった部分も含めて書きます。

目次

営業の仕組み化とは

営業の仕組み化とは、成果が出た理由を言語化し、他の担当者でも再現できる形にすることです。

ポイントは「誰がやっても同じ結果になる」ことではありません。成果が出たときに、なぜ出たのかを説明できる状態にすることです。

説明できなければ、次に同じことを狙って起こせません。逆に説明できれば、精度を上げていけます。

標準化・型化との違い

標準化は手順を揃えること、型化は勝ちパターンを定義することを指します。仕組み化はその両方を含んだうえで、組織に残すところまでを射程に入れた言葉です。

手順書を作っただけでは仕組みになりません。使われて、更新されて、初めて仕組みとして動きます。

仕組み化は効率化のためだけではない

営業の仕組み化は、業務効率の話として語られがちです。しかし本当の価値は、判断の材料が組織に残ることにあると考えています。

なぜこの顧客は契約したのか。なぜあの商談は失注したのか。これが個人の記憶に留まっている限り、事業の意思決定には使えません。

営業が属人化したままだと何が起きるか

1. 売上の予測が立たない

特定の担当者に成果が偏っていると、その人の稼働状況で売上が上下します。来月いくら立つのかが読めないため、採用も投資も判断できません。

2. ノウハウが組織に残らない

成果を出している担当者ほど、自分のやり方を言語化していないことが多くあります。本人にとっては当たり前の行動なので、聞かれなければ説明する機会もありません。その状態で退職されると、勝ちパターンごと失われます。

3. 新人が育つのに時間がかかる

型がないと、教育は同行と背中を見せることに頼ることになります。教える側の負担が大きく、教わる側も再現しづらい。結果として、戦力化までの期間が読めなくなります。

仕組み化は「プロセスの標準化」から始めない

ここが、一般的な解説と最も違う部分です。多くの記事は「まず営業プロセスを可視化しましょう」から始まります。しかし実務では、その前にやることがあります。どのターゲットなら再現するのかを特定することです。

プロセスを整える前に、当たる相手を絞る

プロセスが同じでも、相手が違えば結果は変わります。当たらない相手に対して整った手順で当たり続けても、成果は出ません。

支援したSaaS事業者では、営業組織を立ち上げる段階で、商品特性から相性の良さそうなターゲット群を先に抽出しました。プロセス設計より前の工程です。

セグメントは「リスト化できるか」で切る

ターゲットを絞るとき、理想の顧客像から入ると実務で詰まります。「意思決定が早い会社」「デジタル化に前向きな会社」といった切り方は、正しくてもリストが作れません。

そこで、業種と規模感を軸に切っていきました。リストアップできる粒度かどうかを判断軸に入れる、ということです。顧客の捉え方については顧客理解とは?で詳しく解説しています。

セグメントによってアポ率は桁で変わる

インサイドセールスでフォーム営業を回していたとき、リストによる差は明確でした。

数百件送って1件もアポが出ないリストがある一方で、同じ件数で3〜4件アポになるリストもありました。同じ訴求文、同じ担当者、同じ工数です。違うのはリストだけでした。

この差を知らないまま「アポ率が低いのはトークが悪いから」と改善に入ると、直すべきでない場所を直すことになります。

工程ごとに型をつくる

ターゲットが定まったら、工程ごとに型をつくっていきます。一度に全体を設計するのではなく、顧客とのやりとりを重ねながら固めていく形です。支援した事業者では、次の3工程を扱いました。

  • フォーム営業の訴求内容:何を書けば返信が来るのか
  • 商談前のヒアリング:何を聞いておけば商談の精度が上がるのか
  • 導入時の案内:SaaSだったため、契約後の立ち上がりまで含めて設計

営業の型というと商談トークを想像しますが、実際には接点の前後まで含めて初めて機能します。

先に型を決めてから運用する、は成立しにくい

理想を言えば、型を設計してから運用に乗せたほうがきれいです。ただ、最初の時点では何が効くのか分かっていません。分かっていないものを設計しようとすると、想像で埋めることになります。

実際には、やりながら効いた要素を残していく順番になりました。先に型ができるのではなく、運用の結果として型が残る、という感覚です。

返信が来るフォーム営業に共通していたこと

別の案件になりますが、実際にアポが取れていたフォーム営業の文面には、共通する構造がありました。

  • 冒頭で用件を宣言する:何の目的で連絡したのかを、最初の2〜3行で言い切る
  • 商品説明ではなく、相手の状況から入る:機能の紹介ではなく、相手が置かれている場面を先に置く
  • 実績を具体で出す:社名を出せない場合も「ホテル業界向けの人材会社様」のように業種で示す
  • 次のアクションを小さくする:「ご提案の機会を」ではなく「15分ほどの情報交換」と、時間を明示して区切る

4つ目が効きます。受け取る側からすると、商談の予定を空けるかどうかの判断は重いものです。時間が明示されていれば、その判断が軽くなります。

文面の長さは400字以内が目安です。実際にアポが取れていたものは365字でした。長いほど丁寧に見えますが、読まれなければ意味がありません。

送信前に確認していた項目は、次の7つです。

確認項目見るポイント
誰宛か書いてあるか読み手が、どの部署に転送すべきか判断できる
前半に連絡の目的があるか冒頭だけで用件が分かる
機能ではなく効果を書いているか相手が得られるものを書く
実績や数値があるか根拠があると信頼が増す
取ってほしい行動が書いてあるか次に何をすればいいかを明示する
400字以内に収まっているか長いと読み手の負担になる
改行や記号で読みやすいかぱっと見て内容が入る構成にする

そして、訴求文とリストは切り離せません。同じ文面でも、当たらないリストに送れば返信は来ません。前述のとおり、数百件送ってゼロのリストと、3〜4件アポになるリストがありました。訴求文を直す前に、リストを疑うほうが先です。

型にできる工程、できない工程

すべての工程が型にできるわけではありません。ここを最初に見極めないと、労力が無駄になります。型化を阻む要因は、大きく3つあると考えています。

1. 自社の担当範囲外の工程

支援していた案件では、インサイドセールスまでが担当範囲で、フィールドセールスは別の担当でした。商談内容が見えず、フィードバックの経路もない工程は、型にしようがありません。

これは能力の問題ではなく、構造の問題です。担当範囲の外にある工程は、型化の対象から外す。もしくは、範囲を広げる交渉から始める必要があります。

2. 型化が得意でない担当者がいる

営業担当には、自分の行動を言語化するのが苦手な人が一定数います。成果を出していても、なぜ出ているのかを説明できない。

これは責める話ではありません。優れた営業ほど、無意識に相手に合わせているからです。型化を進めるときは、言語化できる人から着手するのが現実的です。全員に同じ粒度を求めると、現場が止まります。

3. 型が刺さらない顧客がいる

そもそも、型どおりに進める営業が合わない顧客もいます。その場の対話で関係が決まるタイプの顧客に対して、フォーマットを守ることは逆効果になり得ます。

仕組み化の目的は売上であって、統一ではありません。型を守ることで売上が落ちるなら、その工程は型化の対象ではなかった、ということです。

見極めの順番

この3つは、次の順で確認するのが早いと考えています。

  • その工程は自社の担当範囲にあるか
  • 担当者は行動を言語化できるか
  • 型どおりに進めて、顧客の反応は落ちないか

1つでも欠けていれば、その工程は後回しにして構いません。

ヒアリング項目を揃えるべき本当の理由

商談前のヒアリング項目を揃えることには、効率化とは別の価値があります。営業のヒアリングが、サービス改善の一次情報になるということです。

中小企業では、営業がその役割を兼ねる

大企業であれば、顧客調査を専門に行う部門があります。一方、ベンチャーや中小企業にはその余裕がありません。顧客と最も多く接しているのは営業担当です。つまり、一次情報の入口が営業しかない状態です。

項目が揃っていないと、情報が集まらない

担当者ごとに聞くことが違うと、集まった内容を横に並べられません。「多くのお客様が言っていた」のか「一人が言っていた」のかが判断できない。項目を揃えるのは、比較できる形で情報を残すためです。この点は定性分析の考え方と重なります。

揃えていた項目と、足りていなかった観点

支援したEC事業者向けのSaaSでは、売上に応じた従量課金のモデルでした。そのためヒアリング項目は、次のようなものが中心になっていました。

  • ECの規模感:課金額に直結するため
  • 対象商品:単価の高い商材ほど需要があるという仮説から
  • その商材と相性がよいかどうか:サービスとの適合を見るため

いずれも、受注できるかどうかを判断するための項目です。

一方で、振り返ると足りていなかった観点があります。

  • サイトへの流入経路
  • 継続的に新規購入者が来ているか

この2つは、受注の判断には要りません。導入後に価値を感じてもらえるかどうかを見るための項目です。

前者は短期の売上のため、後者は中長期の成果のための項目です。どちらも必要ですが、実務では前者に寄りやすいと感じています。

何を聞くかは、どちらの目的で聞いているかで変わります。両方を1つのフォーマットに詰め込むと項目が増え、現場が埋めきれなくなる。ここが設計の難しいところだと思っています。

プロダクト改善につながると、営業も楽になる

集まった情報がサービス改善に反映されれば、次の商談で説明しやすくなります。営業が情報を出す、プロダクトが良くなる、営業しやすくなる、という循環です。ここまで回れば、営業の仕組み化は事業の仕組み化になります。

ただし、短期の売上と衝突する

前のセクションは理想論です。実際には簡単に成立しません。

項目を埋めることが目的化する

ヒアリング項目を揃えると、担当者は項目を埋めようとします。目の前の顧客が話したがっていることより、フォーマットの空欄が優先される。

こうなると、最も重要な売上貢献を阻害します。短期で数字を追う立場からすれば、当然の反発です。

機能させるには2つの条件がいる

営業を事業改善の情報源にするには、条件が要ります。

  • 担当範囲が繋がっていること:情報を集める工程と、それを使う工程が分断されていない
  • 担当者がプロダクトを理解していること:何が改善の材料になるかを判断できる

この2つが揃わないと、ヒアリング項目は単なる入力作業になります。

実際には、そこまで到達できなかった

支援した案件で、ここまで機能したかというと、できませんでした。フィールドセールスが担当範囲の外にあり、その担当者はプロダクトへの理解が深くはなかった。

情報を集める設計はできても、それを使う経路が繋がっていなかったということです。理想の形は描けても、条件が揃わなければ到達しません。やるかどうかを判断する前に、この2つが自社にあるかを確認したほうがいいと思っています。

営業マニュアルの作り方

完成させようとしない

最初から網羅的なマニュアルを作ろうとすると、完成前に力尽きます。効いた訴求が1つ見つかった時点で1ページ書く、くらいの粒度で始めるほうが続きます。

「なぜそうするのか」を書く

手順だけを書いたマニュアルは、状況が変わると使えなくなります。「この順番で聞く」ではなく「相手が課題を認識していない場合が多いので、先に現状を聞く」と書く。理由が書いてあれば、応用が効きます。

更新される場所に置く

作って共有フォルダに置いたきり、というのが最も多い失敗です。商談後に必ず開く場所に置くか、更新する担当を決めるかのどちらかが要ります。

営業プロセスの可視化とKPI設定

可視化は「どこで落ちているか」を見るため

営業プロセスを可視化する目的は、全体を絵にすることではありません。どの工程で止まっているかを特定するためです。リスト作成、アプローチ、アポ獲得、商談、受注。この各段階の数を並べれば、詰まっている箇所が見えます。

KPIは工程ごとに置く

支援した案件では、インサイドセールス側でセグメントごとのアポ率、フィールドセールス側で商談の成約率を見ていました。

売上という結果だけを追うと、打ち手が「もっと頑張る」になります。工程ごとに数字を置くと、どこを直すかが決まります。

数字を見る会議を先に決める

KPIを設定しても、見る場がなければ形骸化します。週次でも月次でも構わないので、数字を見る前提の場を先に作っておくほうが確実です。数字の扱い方は定量分析でも解説しています。

中小企業が最初にやること

営業の仕組み化を扱う記事の多くは、SFAやCRMの導入を前提に書かれています。ただ、人も予算も限られている状況では、そこから入ると止まります。順番としては、こう考えています。

  • 既存顧客の共通点を洗い出す:受注できた顧客の業種・規模を並べ、偏りを探します。ここが最初のセグメントになります
  • 当たるリストと当たらないリストを分ける:少数でいいので実際に当ててみて、反応の差を見ます。感覚ではなく件数で見ます
  • 効いた訴求を1つだけ記録する:返信が来たフォーム営業の文面、刺さったヒアリングの質問。1つずつ残します
  • 工程ごとの数を数える:ツールがなくてもスプレッドシートで足ります。段階ごとの件数だけ分かれば十分です

ツールの導入は、この4つを回した後で構いません。手作業で回らないものは、ツールを入れても回りません。

営業組織の作り方

役割を分ける前に、工程を分ける

インサイドセールスとフィールドセールスを分けるのは有効な手ですが、人を分けるのが先ではありません。先に工程を分け、それぞれで何を成果とするかを決めてから、人を当てます。

分けると、情報が切れる

役割を分けると、担当範囲の外が見えなくなります。前述のとおり、担当範囲の外にある工程は型化できません。分業には、情報の分断という副作用があるということです。分けるなら、商談の内容が前工程に戻る経路を同時に作る必要があります。

少人数なら、分けないほうが早いこともある

数名の組織であれば、一人が最初から最後まで担当したほうが、情報が繋がったまま残ります。分業は人数が増えてからでも遅くありません。

よくある質問

営業の仕組み化とマニュアル化の違いは何ですか?

マニュアル化は手順を文書にすること、仕組み化は成果が再現される状態をつくることです。マニュアルがあっても使われていなければ、仕組みとしては機能していません。

SFAやCRMは最初に導入すべきですか?

導入は後で構いません。ツールは記録と共有を効率化するもので、何を記録すべきかは運用してみないと決まらないためです。手作業で回らない状態でツールを入れると、入力だけが残ります。

営業担当が型化に反発する場合はどうすればいいですか?

全員に同じ粒度を求めないことです。言語化が得意な担当者から着手し、成果が出た型だけを共有する形にすると、進みやすくなります。

どこから手をつければいいか分かりません。

受注できた顧客の共通点を洗い出すところからで十分です。プロセスの設計より、当たる相手を特定するほうが先に効きます。

プロリバの考え方

プロリバでは、営業の仕組み化を「効率化」ではなく「判断材料を残す取り組み」と捉えています。型を作ること自体が目的になると、現場は動きにくくなります。

大事なのは、成果が出た理由を説明できる状態をつくることです。説明できれば、次に狙って起こせます。

また、仕組み化には向き不向きの工程があると考えています。担当範囲の外にある工程、言語化が難しい担当者、型が合わない顧客。これらを無視して全体に同じ型を当てると、売上が落ちます。

どこまで仕組みにして、どこから任せるか。この線引きを決めることが、実際には仕組み化の本体だと思っています。

ご相談をご検討の方へ

もし現在、

  • 特定の担当者に売上が偏っていて、予測が立たない
  • 営業のやり方を残したいが、何から書けばいいか分からない
  • ツールは入れたが、入力されないまま止まっている

という状況であれば、受注できた顧客の共通点を洗い出すところから一緒に整理することをおすすめします。

プロリバでは、営業戦略の設計から組織の立ち上げ、実行のマネジメントまで支援しています。

まずはお気軽にご相談ください。